インタビュー:松下フユ先生(元 パリ・アメリカン病院日本セクション室長)

元 パリ・アメリカン病院日本セクション室長、松下フユ先生にインタビューいたしました。

 

=先生は去る7月22日、旭日双光章を受賞されました。=

 2016 07 22 DrMatsushita Jukun bis

 

 

まずは自己紹介(フランスでの経験)

 


私がアメリカンホスピタル(アメホス)で勤務開始したのは1990年、日本人向けサービスの充実を目的に「日本人セクション」が設立された時です。

私自身はそれ以前からフランスに住んでいました。かつてフランスに住むことを決めた理由は、実は子供の教育です。

もともとフランス人の夫と日本に住んでいたのですが、当時の日本の法律では私達の子供は日本国籍を取得できずフランス国籍になりました。それならばフランスの学校で教育を受けさせた方が良いかと考え、生活の場をフランスに変えたのです。そこでフランスで医師免許を取得しようとしたのですが、一つ後悔することがありました。

私はフランス語を正式に学んだことは無く耳学問なのですが、当初フランス語があまりできない状態でパリ・サンルイ病院の研修医(皮膚科)となりました。私の日本での専門は一般内科でしたが、皮膚科であれば多少言葉に難があっても目で見ればわかると考えていたのですがこれがそうでは無く、教授による説明や文章での記述は全てフランス語、しかも教授の話の時には積極的なフランス人研修医たちの輪で教授を囲む壁ができてしまい、もともと得意でないフランス語での説明がさらに聞こえ難いという状況となってしまい、結局フォローすることができなくなりました。

その後、実家が日本で開業医を営んでいたこともあり、日仏間を行ったり来たりしながら日本での医療行為を続けていたのですが、1990年にアメホスが日本人セクションを設立するに際し、日本の医師を迎えましょうということとなり、私ともう一人の医師の二人が雇われました。

これが正式なフランスでの医療活動の始まりとなります。

その際、私としては時々日本に帰って臨床の仕事をしたく、もう一人の先生も当時アフリカで医療の仕事をしていらっしゃいましたので、二人でうまくローテーションを組むことができました。アメホスでの主な役割は、フランス人医師に、患者さんの症状や病歴を正確に説明すると共に日本での医療はどんなものかを伝え、日本人に適した治療法を推奨することと、日本人患者の方に、フランスと日本における医療の考え方の違いを伝えることにより、スムースで効果的な診断や治療が出来る様にすることでした。

 

 

2016 07 22 DrMatsushita intervue bis

 

 

アメホスの利点(松下先生がこれまで苦労されたこと)


現在アメホスには三村先生という日本人医師や日本人セクションがあり、言葉における不安が無いというメリットがあることは皆さんご存知と思います。それに加え、日本人と欧米人の体格、基礎代謝、そして医療行為の常識感のギャップを埋めるという大切な機能もあります。

例えば人体解剖してみるとわかりますが、大腿骨横の坐骨神経などは、フランス人は日本人よりも明らかに太いです。また平熱の定義についても、日本人では体温が37.2度もあれば立派な発熱ですが、フランスでは平温です。医学的にはフランスの考え方が正しいのですが、日本人はなかなかそう行きませんよね。また処方される薬の量も、日本であれば250㎎のところがフランスでは500㎎といったことがざらにあります。

即ち日本人の場合は、フランス人にとっては何でもない発熱であっても、少量の解熱剤を少しずつ処方して行くことが重要になります。しかしこのようなことをフランス人の医師は理解せず、彼らは自分たちが正しいのだと譲りません。ですからすごい大喧嘩もいっぱいしました。

別の例では、日本人は胃が弱いので消炎鎮痛剤などを処方するときは必ず胃薬も出してってお願いするのですけど、そんなもの!と言われるのです。これは本当に大変でした。でも今ではフランス人も胃薬必ず出しますよ。ですからあの時あんなにやり合った医者達に対し、「ほら見てごらんなさい」と言う気持ちもあるですが、もう皆さん定年していなくなってしまったので、文句も言えませんけど(笑)。

こういった色々細かいところで日本と同じような治療を目指してきました。一言で申し上げますと 癌などの重篤な病気の場合はアメホスでもほかの大学病院でも医療行為には大差はありませんが、多くの病気に関して日本人に適した医療を行なえるのがアメホスのメリットと言えます。

更なる特長としては、アメホスには最新の医療機器と検査施設が整っているということがあります。

皆さんが病気になり一般の医師の診断を受ければ、精密検査(MRIやPETスキャンなども含む)を受ける為には医師の処方箋をもとに、ラボラトワールに行く必要があります。しかしアメホスの場合、その様な設備は全て揃っている為、必要な検査をその場で受けることができます。また酷い風邪にかかった場合など、一般病院の救急外来に行けば随分待たされることになりますが、アメホスであればゼネラリストの医師が早く診てくれます。
またアメホスには検診センターもあります。
フランスではもともと人間ドックのシステムは無く、ランクリー先生という方が日本企業の方たちの健康診断のようなこともやってらっしゃいました。そこへ私たち二人が入って、もう少しセンターのようなものをつくるべきと提案し、日本企業の方々にも協力して頂きながら、年齢別の検査内容表などを作成したところ、病院側もこれは良いアイデアだということで健診センターができたのです。ですから今のアメホスの健診センターは、日本人的な発想でできたのです。でもアメホスはこの経緯を認めませんが(笑)。
さらに出産に関しても、日本人女性が妊娠して安心して出産できるよう、ご自身が4児の母でもある稲見さんが日本語でアドバイス差し上げたことはとても喜ばれました。また出産に関する日本語のパンフレットもつくりましたし、高額の費用をかけずに手厚いサポートができる工夫もしています。

 

フレンチパラドクス(フランス人はワインを沢山飲み美食だが長寿)について


適量のワインが体に良いということは確かと思いますが、楽しく食べながら飲むということが大切だと思います。ワインを飲むだけで食べないというのは良くないですね。またコレステロールは何でも有害な様に捉えられがちですが、決してそんなことは無く、脳の活動を活発化させる為に必要なものなど、大事なものも色々あります。ですから総コレステロール値の上限と言われている220mg/dlを超えたとしても、心配する必要はありません。ただし悪玉コレステロールと呼ばれるものは、血管を弱くしたり血液をドロドロにしたりするので、注意が必要です。また飲み過ぎはダメです。
フランス国内では、強いアルコールを飲みがちな北部の方が、フォアグラなど脂っぽい物を食べるがそれほど強く無いアルコールを飲むことの多い南部に比べ、早く亡くなる人の比率が高いです。そしてやはり大切なことは、笑いながら、楽しく食べることですね。

 

ストレスに注意


フランス人が一般に長生きであるもう一つの理由は、ストレスが少ないということもあると思います。

ところが最近では、グローバリゼーションやインタネット社会の普及の為か、フランス人でも、特に組織における中間層の人々の間で、Burn Out (燃え尽き)現象が増えている様です。ストレスに関してはフランスで働く日本人の皆さんにも十分気を付けて頂きたいと思います。
日本企業の幹部としてフランス人を使っておられる方は、日本の会社における常識とフランス人の生活スタイル(特に長期休暇)とのギャップに気苦労される方も多いのではないかと思います。この様なことでストレスを溜めることの無い様、フランスではどうしてもできないこともある...ということを、本社の方に理解頂ける様うまく説明されることを心がけて頂きたいと思います。決してご自分で我慢されないように。そしてワインと共に楽しく美味しく食事をされ、気持ちをすっきり切り替えることが、健康の為に一番と思います。

 

趣味、フランス生活の楽しみ方のアドバイス


去年の夏頃から、コントラクトブリッジにはまっていて、週1回のペースでやっています。「ミスしても絶対に他の人を責めない」というルールのもと、お菓子を食べながら、楽しくやっています。コントラクトブリッジは記憶が重要なゲームであり、認知症の予防にもなるし、とてもおススメですよ。あとは、とにかく笑って、歩くことですね。転んで骨折したら大変と思って、ブローニュの森の池の周りをよく歩いています。

フランスは、本当に豊かな国だと思います。パリ郊外にも素敵な場所がたくさんあるので、是非行ってみるべきです。あと素晴らしいことは、芸術を愛でることですね。オペラ、バレエ、オーケストラ、コンサートなど、ここフランスには、日本では体験できない素晴らしいものがたくさんあります。また、日本でよりもフランスで見ることのできる素晴らしい日本の文化イベントもありますよね。

皆さん色々お忙しいでしょうが、このような機会を逃さない為に、とにかく、先に予約をしてしまい、行かざるを得なくするのがポイントだと思います(笑)。そして、休みを必ずちゃんと取ることですね。

もう一つ、フランス生活をより楽しむために、フランス人のコミュニティに入ってみることもいいと思います。私は「すずかけの会」というものに入っています。2018年に40周年を迎える、会員151人の日仏婦人会です。フランス人と日本人の比率は、半分半分くらいですが、フランス人女性は日本での生活経験のある方が中心で親日家の方々ですし、色々なイベントを開催しています。気軽に参加できる会であり、お勧めできます。

 

同僚への感謝


最後になりますが、アメホスで一緒に頑張ってきた同僚の皆さんに、心から感謝を申し上げたいと思います。

今も現役で頑張っておられる、私の同僚であった日本人セクションの稲見さん、渡辺さん、ダブーさん、そして検診センターの古田さんと田中さんに、今後も一層ご活躍頂けるようエールを送りたいと思います。
また、三村先生は日本人の医師として日本人の患者のために、8年も献身的に頑張っておられます。これからも皆さんのために引き続きご尽力頂けるよう、是非お願いしたいと思います。


 

三村 佳弘 先生

三村 佳弘
アメリカンホスピタル
日本セクション

 

アメリカンホスピタルの電話番号

このたび、日本人の患者様へのサービス向上のため、三村医師の秘書直通電話(日本語)を設けましたので、ご利用下さい。三村医師の診察予約、お問い合わせ等は秘書直通電話に直接おかけください。また、三村先生以外の外来診察、その他のご用件は今まで通り、日本セクションにご連絡下さい。

 

三村医師の診察時間
Tél:01.46.41.26.16
平日 8:30~18:00
土曜日8:30~13:00

 

日本セクション
Tél:01.46.41.25.15
平日9:00~18:00

 

健康診断センター
Tél:01.46.41.25.62
平日8:00~16:00

 

アメリカンホスピタル ホームページ
http://jp.american-hospital.org/

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