観光・運輸・レジャー業界:日野 裕司/全日本空輸

新年明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

2020年は新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)拡大が世界を席捲した激動の1年となりましたが、各種業界の中でも「観光・運輸・レジャー業界」が最大の影響を受けたと言えるかと思います。

国際航空運送協会(以下、IATA)によると、世界レベルでは、2020年の航空旅客総需要(旅客キロ)は、過去最高の需要であった2019年比で66%減と、第2次大戦以降最悪の見通しとなっております(同じく航空貨物需要は11%減の見込み)。

日本の出入国者数も大きく影響を受け、各国の入国制限が本格化した4月以降11月までの8ヶ月間の実績は、日本人出国者数は2019年比98.7%減の17万人(前年同時期は1,345万人)、訪日外国人数は同99.4%減の11万人(同2.130万人)となっており、日本と海外の人の流動がほぼ停止しました。(数値はJNTO統計より)

業界としても、2020年は4月からの「首都圏発着枠の拡大による羽田空港国際線拡大」や7-8月の「東京2020オリンピック・パラリンピック大会(以下、東京オリ・パラ)」を受けて、訪日旅客数4,000万人目標達成に向け大きな盛り上がりを期待していただけに落胆も大きい状況です。

このような環境下で迎えた2021年ですが、国際的な人の往来再開に関してはCOVID-19の感染抑制がキーポイントになり、新型コロナウイルスワクチンの効果と普及に期待をするところです。ワクチンの普及については、2020年末から一部の国で接種が開始されておりますが、一般国民レベルの接種までは時間がかかりそうであり、効果・普及率など不透明感も強いところです。

また世界的には、搭乗前後にPCR検査を義務化することで入国制限の緩和と隔離措置の免除をするなどの運用が始まっており、ワクチンとともに各国での流動再開への取り組みも注目されています。


日本においては、7月に開催予定の東京オリ・パラを契機とした外国人入国制限と隔離措置緩和が流動再開のきっかけになるのではと目されており、それに向けて2020年11月には国際大会のテストケースも行われました。

東京オリ・パラでは外国人観戦者にパスポート情報やチケット情報、陰性証明書、移動情報などを登録したアプリをインストールすることによって、ワクチン接種も義務化せず入国後2週間の自主隔離を免除し、移動制限を行わないようにすることを検討されております。

一方で足元では感染拡大が止まらず、対策の一つとしてGOTOキャンペーンの一時停止など国内でも流動を止める動きもあり、今後の状況に注視が必要と言えます。


IATAによると、上記のような対応が取られたとしても、2021年における人の流動は限定的であり、地域別の旅客キロは、いずれも2019年比で、EU56%減、アジア太平洋43%減、北米45%減との見通しで、世界規模で旅客需要が2019年レベルに戻るのは2024年までかかるとの厳しい予測がされております。

物流においては、コロナ禍の影響で急速に縮小した貿易量が2020年下期から徐々に回復してきており、通常の経済活動が日仏、欧州で継続できれば輸出入とも2021年中に2019年レベル近くまで戻ることが期待されています。そのなかで供給サイドとして海運、空運とも2019年レベルまで戻れる見通しは立っておらず、全体を通して逼迫した状況が想定されます。2020年下期から続く世界各地での港湾の混雑は欧州も渦中にあって2021年上期中はその影響が残ると思われます。一方でコロナワクチンの開発、製造が急ピッチに進んだことを受けて、航空貨物では欧州から日本向けのワクチン輸送が開始されますが年間を通じてそれがどの程度市場全体に影響を及ぼすかが注目されます。そしてBrexitを迎える2021年は、それが中長期的にサプライチェーンにどのような影響をもたらし、仏英間、欧英間、日欧間の交易にどのように作用するか見定めていくことになろうかと思います。

上記のとおり、業界としては2021年も厳しい状況が続くことが予想されますが、With/Afterコロナのニューノーマルな時代において、新たなビジネスモデルを構築しながら、いかにしてこの難局を乗り越えていくかがポイントと言えるでしょう。

一日でも早くコロナ禍が終息し、世界に再び平和と安全が戻りますことを祈念しております

 

全日本空輸

日野 裕司

 

在仏日本商工会議所について

kaiin260 100
kaiin260 100

amehosu bannar260 100 03

kawaraban260 100

会員用ログイン

サイト内検索