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サイクリングにはまってしまった/北村敏雄(オートバックス フランス)

朝出勤しようと思ったら、ガレージの前を車が塞いでいて出られない。クラクションを鳴らそうが何をしようが持ち主はさっぱり現れず、業を煮やして隣の警察署の前に立っている警察官に相談したら、「近くの交番に電話してください」と言われる。

やっと戻ってきた車の主は、ごめんの一言もなく平気な顔で去って行く…3年前はそんな日常にショックを受けっぱなしでしたが、今やこちらの生活にもすっかり慣れました。フランスでしか起こり得ないようなことにも動じなくなり、嫌なことがあってもすぐ忘れ、時には自己主張もし、日々の小さな幸せにも喜びを感じられるようになりました。

 

そんな私の楽しみは週末に家族とあちこち出掛けることでした。が、3年経った現在、パリ近郊の目ぼしいところはほぼ行き尽してしまいました。また、子供が成長してきて勉強等が忙しくなり、毎週末家族揃って出掛けるということが難しくなってしまいました。妻もそんな子供の面倒で忙しい様子。

致し方なく、週末一人で出来ることを考える様になりました。暇さえあればやっていたゴルフも、数年前子供との週末を優先する為に封印してしまったので、今ではなかなか再開する気が起きません。

何か他に、気軽に楽しめる事はないものか?と考えていたそんなある日、運命の出会いがありました。たまたま立ち寄った自転車専門店で、マウンテンバイクに一目惚れしたのです。そういえば、近郊の森では休日になるとマウンテンバイクを楽しむ人で溢れています。老いも若きも自前の本格的なマウンテンバイクを颯爽と駆っているのを見て、オッサンだってかっこいいマウンテンバイクに乗ってもいいんだ!と、心ときめかせました。パリから少し離れるだけでも、ゴミゴミした街中とは別世界のような休日の楽しみ方がそこにはあるだろうと考えていました。

そんな憧れが、そのお店に足を向かわせたのかもしれません。そして店員さんの懇切丁寧な接客が、私の背中を大きく押しました。そしてなんとその日のうちにマウンテンバイクを衝動買いしてしまったのです。普段の買い物では店員さんに邪険にされることの多い私は(皆さんも多いと推測しますが)、日本であればごく当たり前のサービスなのに、その日は必要以上に有難味を感じてしまっていました。プロショップということで、体のサイズに合わせた色々な箇所の長さや角度、ダンパーの強さなどの調整も思いのまま。また、ブレーキのセッティングを左右逆にしてもらうこともできました(こちらのブレーキは、日本の仕様と左右が逆なのです)。そんな注文は今までなかったとのことで店員さんには変な顔をされましたが、仕事が趣味のこの手の店員さんはこういう時に非常に頼りになります。

今は、時間と天気の都合がさえつけば、マウンテンバイクを乗り回す日々です。主なサイクリングロードはブーローニュ。森の中にはマウンテンバイクにぴったりのオフロードが網の目のように張り巡らされています。

自分の好きなコースを探して走るのは、毎回新しい発見があり、飽きることがありません。森の北部のセーヌ沿いの道は美しく、自然を感じながらのんびり走るのには最適です。また、ロンシャン競馬場の周辺は休日には自転車天国になり、多くの人が練習しています。ロードレーサータイプでツールドフランス気分を味わいたい方は是非どうぞ。そして、ちょっとしたダウンヒルを楽しみたい時はサンクルー公園へ!結構急な斜面があります。上るのは苦労しますが、下るのはスリリング!

子供の都合がつけば、一緒に出掛けたりもしています。そういう場合、大抵一回は森の中のカフェで一休み。カフェでは犬の散歩のついでに寄っている常連客も多く見受けられ、そういう人達や犬と触れ合うのもまた楽しいものです。

こんな都心の近くに自然豊かなオフロードコースが多くあるのは、パリならではではないでしょうか。

今や、すっかりサイクリングにはまってしまった私。今度は車で、もう少し遠くの森に行ってみようと思っています。

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