2021年百貨店業界の見通し
新年明けましておめでとうございます。
2021年も在仏商工会議所会員各社の益々のご繁栄と、会員各位およびそのご家族のご健勝をお祈り申し上げるとともに、新型コロナウイルスの一刻も早い沈静化を切に願います。
2020年の百貨店業界は、4月・5月の緊急事態宣言時に店舗の臨時休業を実施。さらに訪日外国人減少によるインバウンド売上の激減など、新型コロナウイルス感染拡大による影響を大きく受けました。また国外を見渡しても、米国のニーマン・マーカスやJCペニー、英国のデベナムズが経営破綻の発表を行うなど、業界にとってこれまでに例を見ない厳しい1年となりました。
2021年の見通しとしましては、コロナと共存しながらのⅤ時回復を目指すことが必須となりますが、その中で以下の3つの取組みが注目されるものと思われます。
1つ目は「デジタル化への対応」です。2020年はコロナ禍において消費の実態がリアルからネットへと急激にシフトし、消費のスタイルが大きく変化した1年でした。百貨店としても、デジタルへの対応が不可欠となってきます。日本の各百貨店だけでなく、欧州の百貨店も昨年のロックダウン時からオンライン接客やライブコマースを実施しているように、今後は百貨店の強みであるリアル店舗と顧客基盤にデジタルを融合して新たな「体験の場」を創造することがますます重要となってきます。
2つ目は「百貨店モデルからの転換」です。百貨店では近年、「消化仕入れ」と呼ばれる販売手法から、テナント運営を行い賃貸収入を得る不動産モデルにシフトチェンジする「脱百貨店」化が進んでいます。百貨店は好立地にあることが強みですが、その強みを活かすための店舗の魅力アップが課題です。テナント運営の不動産モデルは衣・食・住といった商業の枠に囚われない幅広い店舗の導入が可能です。2021年も、各店舗の魅力を高めるための様々なコンテンツ導入の動きが見られ、「脱百貨店」の動きはさらに加速していくと思われます。
3つ目は「サステナビリティへの取組」です。ギャラリーラファイエットが提案する『GO FOR GOOD』やセルフリッジが提案する『Project Earth』などサステナビリティに関する取組は欧州の百貨店が一歩先を進んでいますが、日本においても具体的な活動内容は各社異なりますが、「地域社会との共生」や「低炭素社会への貢献」など様々な活動が加速していくと思われます。
本年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。
株式会社大丸松坂屋百貨店
パリ駐在員事務所
牧野 高明