肝炎とは、A型、B型、C型、D型、E型などのウイルス、アルコール、薬物、自己免疫などによって起こる病気です。その中でも日本で最も多いのがA型、B型、C型のウイルス性肝炎です。そして感染すると持続し慢性肝炎になる確率が高いのが、B型肝炎とC型肝炎なのです。慢性化した場合、その後肝硬変や肝がんに移行してしまう恐れがあります。現在日本では、B型慢性感染者が110万人~140万人、C型慢性感染者が190万人~230万人存在すると推定されていますが、感染時期が 明確ではないことや自覚症状がないことが多いため、適切な時期に治療を受ける機会がなく、本人が気づかないうちに肝硬変や肝がんへ移行する感染者が多く存在することが問題となっています。
特にB型肝炎は、主要な世界的健康問題とされており、ウイルス性肝炎の中では最も注意すべき型です。B型肝炎ウイルス持続感染者の母親からの感染(母子感染)、B型肝炎ウイルスをもった人とのカミソリや歯ブラシの共用、入れ墨、ピアスの穴開け、違法薬物使用時の回し打ちなどによる感染(血液感染)、性行為による感染の3つが主な感染経路です。知らないうちに感染し原因が特定できないケースもあります。世界中で20億人が感染していると推計されており、毎年60万人がB型肝炎の急性または慢性の経過によって死亡しています。よって感染を予防することが重要視され、1992年にWHOはすべての出生児にB型肝炎ワクチンを接種することを推奨しました。その結果、 2009年までに世界177ヶ国で、生後0ヶ月から、または、生後2ヶ月から、さらに国によっては思春期の小児に対しても、定期予防接種として接種されています。B型肝炎ワクチンは1982年以降、世界中で10億回以上接種されています。多くの国では、小児の8%から15%がB型肝炎ウイルスに持続感染していましたが、予防接種によって、予防接種を受けた小児における持続感染の割合が1%未満に減少しているとのことです。B型肝炎ワクチンの感染と持続感染の予防効果は95%であり、世界初の「がんを予防するワクチン」なのです。規定の接種回数で、乳幼児、小児、青少年の95%以上に、感染予防に必要な抗体ができます。その予防効果は少なくとも20年続き、おそらく生涯持続すると考えられます。
どういうわけかB型肝炎ワクチンは日本ではいまだに任意接種ですが、平成27年1月9日、厚生労働省の専門部会はB型肝炎ワクチンを定期接種にすることを目指した意見をまとめました。早ければ平成28年度から定期接種化される見込みです。フランスでは以前から他の大多数の国と同様に全乳幼児が対象となっています。通常6種混合(ジフテリア、破傷風、ポリオ、ヒブ、B型肝炎)として乳児期に3回接種します。6種類の成分が1本の注射器に入っているので赤ちゃんにとってはフランスのほうが少なくとも注射に関しては楽だといえそうです。