渡仏してすでに15年が経ちました。人生の転機に伴い、私の休日の過ごし方も少しずつ変わってきたように思います。
パリ大学の学生時代、言葉の壁もあり教科書と向き合う時間がかなり長かったあの頃の私は、フランス人の友人達や他国から留学している友人達と放課後は大学の図書館で一緒に過ごし、ひとりになると自宅近所のポンピドゥーセンター併設の図書館に夜22時の閉館間際まで休日も関係なくほぼ毎日通いつめていました。
そんななか、大学の夏休みの研修先にボルドーのワインネゴシアンを選んだことをきっかけに、ワインを真剣に学ぶ機会を得て、休日の時間の使い方に少し変化が出てきました。
ただ学生という立場上経済的に余裕がなかったので、少し奮発して購入したワインに自分で料理したものを合わせ、友人を招いて週末の食事を楽しむようになったという程度の変化でしたが・・・幼い頃より料理するのが好きだったことも幸いしたようです。
大学を卒業し社会人になってからも、休日には食事をワインでどう楽しむかが変わらない一番の嗜好であり、結婚してからは夫婦揃ってますます傾倒していったという感じでしょうか。
なかでも、偶然入ったフレンチレストランではワインの話がきっかけでオーナーと懇意になり、そのオーナーを介して、フランス人ソムリエや、ワイン通のフランス人達とも知り合い、週末自宅に招かれては月に一回ペースで開催される「テーマをしぼったワイン会」に参加するという休日の楽しみも増えました。
参加メンバーがほぼ50歳以上というなか、当時20代の私と妻が最年少組であり、しかも唯一の外国人組にも関わらず、値の張るワインも惜しみなく試飲させてくれ、食前酒の際のおつまみひとつとっても選りすぐりの絶品が用意され、ちなみに現在も続いているこの会は「無芸大食」な我々夫婦にとっては大変ありがたいものであります。
一昨年に息子が誕生してからは、国際色豊かに過ごした大学時代の友人家族達と子供連れで賑やかに過ごす週末もあります。お互いに休日を利用してピクニックをしたり、子供達のお誕生会やクリスマス会などを開くといった幸せな変化にも恵まれました。
子供中心になりがちな生活の中で、日曜には朝から息子をベビーカーに乗せて近所の市場へ買い出しに行き、その日に飲むワインとの相性を考えながら、じっくり食材を選び、自宅で料理し、ゆっくり時間をかけて他愛ないおしゃべりをしながら食事をいただく、という休日の在り方が損われることなくいられるのはフランスならではないかと思い、これまたありがたい限りです。
年月と共に形を変えつつも「ワインと食と戯れて過ごす休日」のおかげで、私のフランス生活はより実り豊かなものになっていると思われます。
滝沢哲也