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フレンチタッチ/Dé-SIGNE

 

フランスに生活されておられる皆様には今さら申すまでもありませんが、私達は日々フランス人の物の考え方と日本人の物の考え方とが異なる場面に遭遇します。言語や思考構造の違いその他様々な要素が原因しますが、今日はデザインを通しての日仏の違いをお話したいと思います。

 

私の会社で受け持っているデザインとはグラフィックデザイン、プロダクトデザイン、インテリアデザインの分野なのですが、どの分野でも日仏の思考パターンから来るアプローチの違いがあるのです。

 

インテリアデザインの場合、たとえば日本のクライアントさんがマンションの図面を持って来られて、この空間をフランス的にして下さい、と言う課題が与えら れます。日本の方はディテールにこだわりますから、フランスの家具を置いたり、あるいはその他の小物や装飾でフレンチタッチを期待されます。けれどもフラ ンス人はディテールに入る前に、まず全体から内容をとらえますから、フランスの家具を置くには空間そのもののとらえ直しが必要です。 従って図面の完全な 引き直し、と言う事になります。プロダクトデザインでも同様で、ある時幼児製品メーカーから頼まれて、ベビーカーやベビーチェアー、バスタブなどのデザイ ンを手掛ける時がありました。その時も最初はディテールだけ、あるいはまたテキスタイルの部分だけお願いします、と言う事でしたが、そのメーカーの現行の 商品を送って頂いたところ、フランスのデザイナー達は“まムこれでは機械のようだねー、まるで歯医者の椅子のようだわ、”とびっくりしていました。と言う のは機能性にこだわり過ぎて、“赤ちゃんがお母さんの腕に抱かれるような優しい場所”と言う本来の意味を忘れてしまったかの様だったからです。そこでやは り製品として全体を見直すと言う事になりました。またその時に日本のクライアントさんからは、椅子は赤ちゃんが寝る事も出来て、また食べる時にも使えるも の、と言う希望が出されましたが、これはフランスのデザイナーにとってはちょっとした難題でした。原則を重んじ、ものの定義づけ、が大事なこの国の人たち にとって、食べるための椅子なのか寝るための椅子なのかと言うことは大問題なのです。製品の定義が全く異なり、定義が異なればおのずとデザインも違ってく るからです。

 

もちろんデザイナーの仕事はクライアントさんの希望や期待に応えなくてはいけないし、また市場の需要にも応える事を任務としますから、寝食兼用の難題を解 決することは大変刺激的な事なのですが。こうした日仏の発想の違いや生活習慣の違いは、取り扱う一つ一つのテーマごとに私達が出会う大変勉強になる課題で すが、最後にこれは発想の違いと言うよりも文化の違い、と言う事で、グラフィックデザインの分野でのお話を致します。私達は良く日本の企業から御年賀状の デザインを依頼されます。今では私と一緒に仕事をしているフランスのデザイナー達はこの問題にもすっかり慣れてきましたが、最初は大変戸惑いました。とも うしますのは、冬のグリーティングカードといえばヨーロッパではクリスマスカードです。けれども日本で言う年賀状は新年を迎える、新生のつまりは新春の喜 びであり、クリスマスのイメージする、夜、星、雪、鈴といったイマージュとは反対の、朝、日の出、新春、花などです。このいわばコンセプトの違いをフラン ス人に説明しますと、理屈で分かってもなかなかデザインとして様をなさず初めの頃は苦労しました。そのうえ、日本の企業サイドでは年賀状だが出来るだけフ ランス的に、と言う事ですから、門松だとか鶴亀だとか富士山などが出てきたりしては困るので、日本でのイマージュの慣例を見せるわけにもいかず、なかなか 微妙な課題なのです。クライアントさんからは、“新しい年を迎えるのですからね、居住まいをただすような、ね、そしてやはりおめでたい気分を出して下さい よ”と注文は続き、はムいと答えるものの、さてこれをどうフランスのデザイナーに伝えたものか。。。

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