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金メダリストのスーツケース/OCS France

 

「日本に荷物を送りたいのですが、、、」
お客様の声に顔を上げると、劇的なレース展開で見事金メダルを獲った女子マラソン・野口選手の監督とマネジャーが。「ホテルに荷物を置いていくので、集荷 してもらえますか?ホテルでは当地の世話役の方が立ち会います」金メダリストの荷物をお預かりする、という光栄に「おまかせください!」と安請け合いした までは良かったのですが、、、

 

日本にとってはメダルラッシュとなった2004アテネ・オリンピック。近代オリンピックの聖地で行われたこの大会期間中、OCSはアテネに臨時オフィスを 開設、欧州各地の駐在員が交代で現地入りして朝日新聞、日経新聞の配送と国際宅配便を手がけました。(朝日新聞は大会期間中日本の夕刊をデジタル・プリン トと呼ばれる新しい方式でアテネで印刷。ほぼ日本と同じタイミングで読めるため大変好評でした)

 

今大会は、準備段階からギリシャオリンピック委員会の対応の遅さが心配されていましたが、警備面でも情報が混乱。当初は各国報道機関の集まるメインプレス センター(MPC)の中に入って新聞を配達出来ることになっていましたが、直前になって施設内へドライバーが立ち入り禁止となり、MPC前に到着した時点 で各社に電話、外まで新聞を取りに来ていただくはめに。各報道機関の方々も事情を理解されていたので大きな混乱はありませんでしたが、大変ご迷惑をおかけ してしまいました。

 

大会期間中は日本オリンピック委員会がアテネ市内のホテルに選手やご家族、関係者が寛いだり情報収集をしたり出来るサロン「ジャパンハウス」を開設。そこには大使館のブースとともに大会スポンサー各社の展示ブースも設けられ、佐川急便さんも参加しました。
同社はまだヨーロッパに拠点がないため、OCSに対し日本宛の国際宅配便で協力して欲しい旨打診があり、OCSの駐在員が1名佐川さんのブースに常駐する こととなりました。(お客様にはあくまで佐川急便のスタッフとして対応しましたが、最初は「佐川さん!」と呼びかけられてもすぐに反応出来ず、「随分 ボーっとした人だな?」と思われていたと思います)

 

真夏のアテネは大変な暑さでしたが、ジャパンハウス内は非常に強く冷房が入っており、外から入ってきた方は「生き返った~」などと仰っていましたが、ずっ と中にいると寒くてたまらず(悪いことに佐川さんのブースの真上に冷房の噴出し口があった)、1時間毎に外に出て暖を取る(?)などということをやってい ました。(寒さで縮んだ体にアテネの真夏の太陽が気持ちよく、思わず「生き返った~!」)
ジャパンハウス内では、女子マラソン、男子マラソンの記者会見があったり(JOCのスタッフの話では、高橋尚子選手が選ばれなかったことに対する抗議が殺 到したそうで、「選手選考は陸連が決めたことなのに、なぜJOCに抗議が来るの?」と困っていました)、選手がインタビューを受けたりと、様々なイベント がありましたが、何といっても最大のイベントは常陸宮殿下ご夫妻のご訪問でした。
その日も相変わらず寒さに震えながらお客様を待っていると、いきなり場違いないかつい大男達が入ってきて、全員部屋から出るように指示されました。
何が何だかわからず廊下に出されると、やがて大きなシェパードが連れてこられサロン内に。聞いてみると、常陸宮殿下ご夫妻がお見えになるので、不審物(爆発物)がないかチェックしているとのこと。
その日は私のアテネ滞在の最終日で、朝ホテルをチェックアウトして荷物を持って来てブースの後ろに置いていたのでした。かばんの中には2週間分の洗濯物! 変なにおいがしてシェパードに吠えられないか、気が気でありません。しばらくしてシェパードが何事もなく出てきたときには本当にホッとしました。

 

さて、冒頭のシーンに戻ります。
お預かりしたお荷物は、空港の事務所に持ち帰って内容を確認し明細書を作成して日本に送ります。
ところが、ドライバーが集荷してきた野口選手ご一行のお荷物は、2つの箱と3つのスーツケース!箱は開けることが出来ましたが、スーツケースにはご丁寧にも(当たり前ですが)鍵がかかっています。
うっかりしてました。「中身は身の回りのものだから」と言われてはいましたが、まさかスーツケースを預けていかれるとは、思ってもいませんでした。(当然想定すべきケースですが、その時はまさにボーッとしてたのでしょう)
すぐに世話役の方にお電話しましたが、「集荷に来たらこの荷物を渡してくれと頼まれただけで、中身まではわかりません」とのこと。
マネジャーの方に連絡すると、既にアテネを発って今CDGにいます、との答え(日本-ギリシャ間は直行便がないので、皆さんヨーロッパ内のどこかを経由し てお帰りです)。もちろん鍵も一緒です。「CDGにおられるのなら、うちの人間に鍵を取りに行かせようか?」などとも考えましたが現実的には無理。
成田支社に泣きついて、とりあえずそのまま日本に送り、日本側でマネジャーの方と連絡を取り成田まで鍵を送ってもらうことに(ご一行は関空着のため、成田 で引渡しが出来ません)。野口選手ご一行には、別送品申告を忘れずにしてもらうようお願いをして、何とか事態は収まりましたが、様々な方にご迷惑をおかけ してしまいました。
このような失敗も含め、今回のアテネ出張では沢山のことを学びました。(フランス企業との間だけでなく、日本企業同士でも、企業文化や方針が違うと葛藤が 生まれるという、考えてみれば当たり前のことを実感出来たのは、合弁会社で働く私にとっては大きな収穫でした)
この経験を今後の業務に生かし、さらに精進しよう!と帰りの飛行機の中で固く心に誓ったはずですが、パリに戻ってきたら結局目の前の仕事で精一杯の毎日です。

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