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一機械メーカーから見たフランス/欧州三菱重工業(株)パリ事務所

このコラムはその道を極めた方がその知識と経験の一端を披露する場でしょうから、フランス駐在1年少々の私の様な者が投稿するのはそれこそ場違いと思うの ですが、何か書かないと商工会から追放されるかもしれないので筆を取る事としました。と言いますのも、弊社は700種類以上の製品(金額的に一番小さいの はエンジンバルブで、一番大きいのは原子力発電所でしょうか。)を製造・販売して居り、事務系社員は私を含め長期に亘り同じ製品を担当する事は稀で、その 為にその道を深く極める事が難しいからです。勿論担当製品が変わるとお客様が変わり、色々と新しい経験が積め、それはそれで楽しいものがあります。
海運産業、電気産業、航空機産業、自動車産業、化学産業、鉄鋼産業、製紙産業等々夫々に独特の商習慣があり、慣れる迄は大変ですが、エキサイティングでもあります。
そんな訳で皆様には退屈な内容とは思いますが、ここでは弊社とフランスの関係をご説明し、余白に個人的な感想を書かせて頂きます。

 

過去の商談

70年代はフランスに船舶の仲買人がいた為、パリは船舶輸出の重要な拠点でした。そうしたブローカーはその後イギリスをベースとする様になった為、船舶の商談は全てロンドンで行なう様になりました。
ポスト造船として80年代と90年代のフランス市場に対する弊社の取組みは総花的なもので、トンネル掘削機、タイヤ製造機、包装機械、カーフェリー、空港 手荷物搬送設備、空港用爆発物検知装置、立体駐車場、地域冷暖房設備、各種エアコン、各種エンジン、フィルム製造装置、製鉄機械、ゴミ焼却設備、食品機 械、洗濯機、新聞輪転機、劇場舞台装置、自動車テスト用風洞、自家発電設備、自動車用ターボチャージャー、プラスチック成形機、空港用動く歩道、工作機 械、等々の商談を追いかけましたが、成果は芳しくありませんでした。その理由は恐らくフランス語の壁とお客様のヨーロッパ製品志向によるものと思います。
2000年代に入ると原子力設備の更新工事、化学プラント用ガス圧縮機、工作機械、発電設備、印刷機械、自動車用ターボチャージャー、エアバス社向け航空 機部品、研究所用ロボット等が少しずつですが受注出来る様になりました。
これはフランスの国際化の流れに呼応するものと思います。
つまり、フランス企業もグローバルな競争に伍して行く為には生産設備をより良いものをより安く買う必要が出て来た為、購入先を限定しない様になった為と思われます。
機械に関する限り、フランスに於けるドイツの存在は極めて大きく、フランス人にとり時には若干傲慢に感じる事もある様で、フランスのお客様は日本のメーカーを入れて競争状態を作りたいと思っている様です。

 

最近の商談

一般論としては上述のグローバルソーシングの流れはあるものの、実際の個別商談となると過去のしがらみが大きく影響し、一気に新参者に注文してくれる事は 無い様です。それでも技術的に差別化されていれば、お客様の顔をこちらに向けて貰う事も可能で、原子力関係機器、ガス圧縮機、発電設備、印刷機械などは今 後共弊社のフランス企業向け商品リストの主要部分を占めると思います。ここでフランス企業向けと書きましたのは、フランス国内向け工事は余り無く、フラン ス企業が第三国に建設する工場向けが殆どです。例えば、当地の某社がスペインに発電所を建設する工事を弊社が一括請け負うと言ったものです。
また、最近訪問した某化学会社から中国に化学工場を新たに建設したいが、欧州のエンジニアリング会社では地理的理由から費用が嵩むので、やって貰えないかとの話がありましたが、こうした商談が結構あります。

 

フランスとの技術交流について

弊社にはフランスから技術導入しているものが幾つかあります。
使用済核燃料再処理に関するもの、液化天然ガス輸送船に関するもの、有料道路料金システムに関するもの等です。
また、古くは油圧ショベルです。
大分以前に米キャタピラー社との合弁の新キャタピラー三菱社に事業を移管しましたが、私が入社した当時は弊社で油圧ショベルを製作販売していました。日本 初の油圧ショベルで、“ユンボ”と言う商品名で販売していました。このユンボはフランスのシカム社から技術導入したもので、今でも油圧ショベルの事をユン ボと呼ぶ人は少なくありません。
また、トンネル掘削機に関しては、弊社からフランス企業に技術供与した歴史があります。
(因みに、弊社製のトンネル掘削機がユーロトンネルの約半分を掘りました。)
フランス人と技術的な打合せをするとそのユニークな発想がとても刺激的です。フランス企業と共同で何か開発する事が出来ればと思っています。

 

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以上が弊社のフランスビジネスですが、弊社とフランスの関係はフランスの国際化の進展と共に今後強まって行くものと思っていますし、またそうしたいと思って居ります。
ここからは全く個人的なフランスで思う事を書かせて頂きます。
私は1994年から1999年の5年間家族4人でインドのニューデリーに駐在しましたので、何時もフランスを見る目がインドとの比較になってしまいます。 (家内も同じです。)フランスに居られる日本人の皆さんからすれば、あんな遅れたインドと比較して欲しくないと思われるかも知れませんが、私には良く似た 国と思えてなりません。別にフランスを仏国(ほとけのくに)と書くからではありません。(Plaisanterie!))
フランスは欧米文化若しくは世界文化をリードする国と自負しているのでしょうが、インドは精神世界のリーダーを自負しています。どちらも多民族国家です。 また戦後フランスは混合経済体制をとりましたが、インドも独立後混合経済体制でした。どちらも議論好きの国民です。どちらも役所に出す書類が多い点では一 緒です。余談ですが、過日インドレストランに行った際、店の主人にフランスはどうですかと尋ねると、ひどい国だと言うのです。どうして?と聞き返すと、兎 に角書類書類と役所がうるさいと言うのです。そこで、自分もインドに住んだがインドも同じじゃないの?と言うと、うーん確かに同じだが、インドでは役人に ○○を上げるとスッーと片付く所が違うと言うのです。その後は大笑いで暫く店から出して貰えませんでした。それから、余り他人の迷惑を気にしない所も似て いると思います。勿論違う点も沢山あります。でも電気と水それと風土病の心配をしなくて済むフランスの方が断然生活は楽です。生活は厳しいインドですが、 インド人は真面目です。インドの心は多少理解したと思いますが、最も尊敬すべきはインド人の真理を求める姿勢です。相手の身分、富、人種、年齢、身なり等 に関係無く、真理を語り、真理の探究の道を生きる人をインド人は尊敬します。因みに、インドの紙幣にはサンスクリット語(梵語)で「真理は勝つ」と書いて あります。サンスクリット語と言えば、フランス語になった言葉が結構ある様です。例えば水はeauですが、元々はサンスクリットのapの様です。(日本に は阿伽(あか)として入っています。)
インド人の究極の生き方が真理の探究であるとすれば、フランス人にとり人生の究極の目的は何でしょうか。これを是非知りたいと思っています。どなたか教えて下さい。

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