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奥ゆかしく目立たないもの/海外電力調査会 欧州事務所

 

日本に住んでいるときは屋外にあるせいで存在を意識することがありませんが、フランスでは屋外にあるわけでもないのにやはりあることを忘れがちなのが、電力メーターです。

 

日本だと、一戸建てのときの話ですが、道路脇の電柱から各家屋に電線が引き込まれていて、建物との接点の壁に張り付くように電力メーターが設置されています。このメーターを、毎月電力会社の検針員が読みに来て、翌月その数値、すなわち使用実績に基づいて電気料金が請求されます。

ところが、ここフランス、あるいは欧州一般に言えることですが、この電力メーターが屋外にありません。最初の契約のときや、たまの検針に立ち会われたことがある方はお分かりかもしれませんが、家の中にあって外部から簡単にアクセスできないようになっています。例えば私が借りているアパルトマンであれば、台所の奥の狭い扉の中にあります。

 

ということは、日本のような検針が簡単にできないということになります。そのため、法律でも国によりますが年に2回程度検針が義務付けられているだけで、毎月の請求は前年度の実績からの推定値をもとに行っています。もちろん、年に一度、最終的な実績値をもとに精算します。

 

たしか昨年の報道で見たのですが、これには悪慣行があって、月々の請求を多めにしておいて最後の精算で返金するというケースがあったようです。こうすれば、最終的な売り上げは同じですが、タダで一時的な資金が手に入るというわけです。もともとはガス業界で行われたこの手法が、電気にも及んだとのこと。もちろんこれは欧州の話で、日本ではありえない話ですが念のため。

 

さて、この検針のやりにくさ、検針頻度の少なさと、それに起因する料金請求精度の低さは事業者、消費者いずれにとっても不評です。そこで最近はこれを技術的に解消しようとする動きが広がっています。これがいわゆるスマートメーターと呼ばれるものです。

 

スマートメーターとは、電力メーターの数値を遠隔で読み取ることにより自動検針機能を持たせるというのが最低限のレベルで、そこに需要家への電力消費量情報の提供、電気料金に応じた屋内の電気機器の制御、さらには発電所や送電設備全体の最適制御に組み込んでいくなど、最近のIT技術を活用したいろいろな機能や付加価値が考えられています。消費者のレベルでいうと、電力需要の多い昼に電気料金が高く夜はその逆という時間帯別電気料金も存在しますので、このようなメーター、情報を活用して電気機器の使用を料金の安い時間にシフトすることで料金の節約ができるというわけです。

 

実をいうとこのスマートメーター、欧州では間欠電源である風力や太陽光といった再生可能エネルギーを大量に導入する際の系統安定化対策の切り札のように言われることもあります。

 

現在各国がこのスマートメーターについて実証試験、費用対効果の評価を行っている最中ですが、すでに設置が進んでいるのが特にスウェーデンとイタリアです。スウェーデンは人口密度が低いうえに冬期の気象条件が厳しく検針が大変であることからスマートメーターの設置が積極的に進められました。イタリアでは別の理由、メーターが屋内にあるためにメーターに細工するなどして盗電が多いことからその対策といわれています。フランスでもこのスマートメーター(リンキーという名前がついています)をこれからどんどん入れていく予定のようです。

 

ここ数年のうちには、皆さんの家庭における電力使用量がお手元のパソコンなどでより細かく管理できるようになり、それを参考に生活を見直していけば環境とお財布によりやさしい生活ができるようになるかもしれません。

 

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